Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第2章 決意
エミリが謝ると、カルラは手を口元にあて涙を流し始めた。そして、エミリの隣へ移動し、優しく抱き締め言った。
『……そんなこと、言わないで』
強くエミリを抱き締めるカルラの声は、とても震えていた。カルラの言葉に、エミリは言葉ではなく抱き締め返すことで応えた。
『その代わり、約束して。絶対に生きて帰って来るって……』
『うん』
エミリは強く頷いた。
(死なない。死ねるわけない。だって私は、母さん達を守るために強くなりたいんだから)
これから待っているのは辛い現実。けれど、グリシャとカルラとエレンが自分の帰りを待っていてくれる限り、どんなに恐ろしく辛いことにも負けない。
『待っててね、母さん』
『……ええ』
我が儘言ってごめんなさい。
ありがとう、母さん。
話を終えたエミリは、自分の部屋で早速、家を出る準備を始めていた。ふと視線を感じて扉の方へ顔を向けると、そこには、僅かな隙間からじっとエミリを見るエレンの姿があった。
『エレン、どうかしたの? もう寝る時間でしょ?』
『……うん』
エミリから目を逸らすエレンに、こっちへおいでと手を差し出せば、ゆっくりと扉を開けて中に入ってきた。
トコトコとエミリのところへ歩いて来るエレンが愛しく、エレンを膝の上へ乗せる。珍しく大人しいエレンの頭を撫でながら、エミリはエレンの顔を覗き込む。
『エレン、さっきの話聞いてたでしょ?』
『……聞いてないよ』
『嘘ね。耳が赤くなってるわよ?』
『…………』
口を尖らせるエレンの頬をつつくと、更にムスッと顔を歪める。しかし、それは、エミリにとっては可愛いだけで逆効果だ。エレンに言えば、更に機嫌を損ねるだけだから言わなかった。