Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第2章 決意
「情けない……」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、何も」
家を出る前のことを思い出し、自己嫌悪に陥る。
あれ程エレンやカルラを守りたいと言い張っていたクセに、いざその時が来たとなったら、自分は口先だけのバカ娘だったと。
結局、何も守れなかったのだ。
でも、同じ間違いは、もう二度としたくは無かった。
「……私は、あの子達よりも一足先に」
来年、エミリ達は訓練兵団を卒業する。
そして各々が希望する場所へ入団することができるのだ。
勿論、エミリの希望は前から変わらない。調査兵団だ。
「俺も行くぜ」
「え、フィデリオも? 何であんたまで……」
「……あの日、お前を助けた調査兵、覚えてるか?」
エミリを助けた調査兵。
素早く空を舞い、巨人を一度に何体も倒してしまう程の強さを持った男だった。
エミリは今でもハッキリも覚えている。
忘れない。忘れるわけがなかった。
「うん、覚えてるけど」
「あの人、多分リヴァイ兵士長だ」
「え」
それは最近、兵士の間で有名になってきた調査兵団の主力兵士の名前だ。
現在の調査兵団団長であるエルヴィン・スミスが団長に昇格してから、リヴァイという兵士は兵士長に任命されたと聞いた。
「一人で一個旅団並みの強さを持つ、人類最強と謳われる兵士……あの人以外、俺は考えられない」
「……確かに」
普通なら一体の巨人でも三、四人で倒すのが精一杯だ。それを彼は一人で、二体も三体も一度に相手をする。
あの日もそうだった。
条件は確かに当てはまる。
「俺、あの人を見た時すげぇ鳥肌立ったんだ。俺もあの人みたいになりたいって」
「だから、調査兵団に入るの?」
「ああ、元々調査兵団志望だったけど、また目的が増えたからな」
「『目的が』って?」
「……あの人の下で戦いたいんだ」
「そっか……」
そう話すフィデリオの瞳は、まるで夢を見つけたように強く輝いていた。
少し座学が苦手なフィデリオだが、良い兵士になるだろう。彼の腕はエミリも認めている。
「じゃあ、二人で……」
「おう、入るか!」
新たな決意と共に、二人は翌年、第101期『訓練兵団』解散式を迎えた。