Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第10章 存在
朝食を終え、少し談笑してから二人は街へ出ることにした。昼食は何処か食べに行こうということで、エミリは病衣から私服に着替え金を持つ。
受付で看護師に声を掛けてからエレンと病院を出た。
ずっとベッドの上だったため、街に出るのも久々だ。
松葉杖で歩くのも慣れてきたが、やはり進むペースは遅い。けれど、文句も言わずにエレンはそれに合わせてくれる。
(いい子……!! ホントにエレンってばいい子!!)
表情には出さないよう心の中で悶える。きっと顔と口に出せば鬱陶しがられるから。
「エレン、何食べたい?」
「俺は別に何でもいい」
そう言うが、顔には食べたいものがしっかりと書かれている。エミリはクスリと微笑むと、よくペトラ達と訪れる行きつけの店を選んだ。
その店は、お手頃な値段で貴重な肉類の料理を食べることも出来る。若い者でも入りやすい外装なため、エミリの年頃の子達から人気の場所である。
店の扉を開けると、カランカランとベルが鳴る。「いらっしゃい!」とその店の店員が声を掛け、入口へ視線を移す。
「あら、エミリちゃんじゃないか! 久しぶりねぇ」
「お久しぶりです〜!」
親しげに声を掛けるのは中年の女性。気さくな性格で、常連客からもよく親しまれている。
「ペトラちゃんたちから入院してるって聞いて、心配してたんだよ?」
「あはは、心配かけてごめんなさい」
「元気そうでなによりさ! ところで、お連れさんは……エミリちゃんの兄弟?」
女性店員は、エミリとエレンを交互に見比べ問いかける。
説明する前に兄弟だと当ててしまうのだから、やはり二人は相当似ているのだろう。
「はい、弟のエレンです!」
「えっと……初めまして!」
「あら、やっぱり? とってもエミリちゃんと似ているから、もしかしてって思ったのよ! よろしくね!」
本日二度目の似ている発言。エミリは可愛い弟とそっくりと言われて喜んでいるが、エレンは苦笑いという微妙な顔をしていた。