Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第2章 決意
『…………実は、エレンも調査兵になりたいって言っているの』
『っ!?』
『……12歳になったら、きっと母さんの反対を押し切ってでも訓練兵団に入団するはず。エレンはそういう子だから。
もし、それからエレンが調査兵になったとしたら、あの子は危なっかしいから、いつでも守れるように私も強くなりたいの!』
『……エミリ』
少しでもいい。伝われ。伝われ!
そんな念を込めながら、エミリは続けた。
『それに、いつか本当に壁が壊れるかもしれない。”絶対”に安全とは言い切れない。もし壁が壊れてしまったら、その時ちゃんと母さん達を守れるよう、力をつけておきたいの!!』
『…………』
カルラは何も言わない。エミリの考えも気持ちも理解していた。けれど、やはり自分の愛娘を巨人と戦わせたくないのだろう。それが親心というものだ。
『エミリ』
そこへ、ずっと黙って話を聞いていた父であるグリシャが口を開いた。
『それが、エミリの意志なんだな?』
『うん』
『…………そうか。なら、父さんは何も言わない。お前は、自分のやりたい事をしなさい』
『あなた!』
グリシャの発言にカルラは必死の形相で詰め寄る。
エミリもまさか、こんなにあっさりと許可を出してくれるとは思わず、驚いた。
グリシャは、昔からエミリやエレンに、あれをしなさいこれをしなさい、などと強制することはなかった。いつも自由に、そんな中で温かく二人を見守っていた。
今もこうしてエミリの背中を押している。それが、エミリにはとても心強かった。
『カルラ、君の気持ちは痛い程解る。私も不安だよ。娘を巨人と戦わせるなんて……でも、エミリは半端な気持ちで言っているわけではない。私達の気持ちを理解した上で、一人で考え、決意し、いま私達の前にいる』
『…………』
カルラは苦しそうに両手を胸にあて、椅子に座り直す。
(大好きな母さんに悲しい表情をさせて、辛い思いをさせている。馬鹿な娘だよね、私)
『母さん、親不孝な娘で……ごめんね』
本当に……ごめんなさい。