Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第10章 存在
「安心しろ。お前が思っているような内容では無い。まあ、お前の姉関連であることに変わりはないがな」
「…………そう、ですか……」
ホッと胸を撫で下ろす。が、そんな事をしている場合では無い。
エミリが死んでいないということは分かった。けれど、手紙の内容は姉のことで間違い無いようだ。なら、一体何が書かれていると言うのだろう。
「エレン」
「っはい!」
「お前に二日間、休暇を与える」
「え」
突然、キースから出された訳の分からない指示に、エレンは思わず気の抜けた声を出す。
説明も無しにいきなりそんな事を言われても、理解出来るわけが無い。生憎、自分の頭は姉ほど出来が良くない。
「……あの、教官……全く話が見えないのですが……」
「ああ、まずは手紙の内容について説明する」
出来れば最初に説明して欲しかったが、相手は怒るとそれはそれは恐ろしいキース教官。エレンは黙って話を聞くことにする。
「エルヴィン団長から送られてきた手紙には、お前の姉について書かれていると話したが……どうやらエミリは、一ヶ月半前から調査兵団本部の付近の病院で入院しているそうだ」
「入院!?」
とんでも無い単語が飛び出し、またもやエレンは声を上げる。
まさか壁外調査で巨人に襲われ、重症を負ったのだろうか。そうとしか考えられない。エレンは強く拳を握った。が、それもキースの発言によって一気に身体の力が抜けることになる。
「原因は……ドレス姿で20mもある橋から、橋の下にある森へ飛び降りたからだそうだ」
「………………はい?」
エレンは耳を疑った。
予想の斜め上を行った理由に強く握られていた拳は解かれる。
今、教官はなんて言った……?
ていうか何でドレス姿なんだよ。
それよりも何やってんだよ姉さん!!
エレンは頭を抱えた。
昔散々、俺に無茶をするなと怒鳴っていたのはどこの誰だ、と。