Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第2章 決意
「三日前、またエレン達に会いに行ったんだろ?」
「……うん。エレン達、来年、兵士に志願するって」
「そうか……」
元から兵士になりたいと言っていたが、カルラにずっと反対されていた。それでもエレンは、兵士を目指していただろうが、目的が変わった。
最初は、壁の外がどういうものなのかを夢見ていたエレン達。けれど、今は、きっと巨人を殺すことしか頭にないに違いない。
あの日、あの光景を見てしまったのだから無理もないだろう。
「希望はやっぱり……」
「調査兵団ね」
エレンは、ずっと調査兵団を英雄と讃え憧れていた。
壁の外に出て、自由のために戦う調査兵団に入ることは、エレンの大きな目標なのだろう。
エミリは、その為に兵士となった。
エレンが外の世界に興味を持ち出したことがきっかけだった。
もしエレンが、本当に調査兵となって壁外に出る時が来たら、その時は自分がエレンを守る。そう心に決めて、カルラを必死に説得して兵士を目指す許可を得たのだ。
『訓練兵団に……入団する?』
『うん』
『………それで? 卒業したらどこに所属するつもりなの? まさか、調査兵団なんて言わないわよね』
カルラの問いかけに、エミリは顔を俯かせたまま何も答えられずにいた。その通り、エミリが希望しているのは調査兵団だから。
『……ダメだよ。調査兵団なんて馬鹿な真似』
『うん。分かってる。母さんにこれからずっと心配かけるって……でも、それでも私は調査兵団に入りたいの』
『いいえ、認めないよ!! 壁の外に出た人類がどうなるか、貴女も見てきたでしょう!?』
今、カルラの頭の中には、壁外調査からボロボロになって帰って来た兵士達の姿が流れているのだろう。その上、周りから送られる冷ややかな視線と飛び交う罵声の嵐。それは、見ているだけでとても心苦しいものだ。
調査兵団に入れば、今度はエミリがそれを受けることになる。ただでさえ心身共に負荷を負っているのに、更に追い討ちをかけられる。それは、きっと想像以上に辛いものに違いない。
カルラは、調査後のことも踏まえて言っているのだ。自分の娘が生死を賭けた戦いに出向き、無事に帰ってきても、待っているのは周りからの非難の声。そんなもの見たくないに決まっている。
(でも、でもね、母さん……)