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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第9章 幸福




「おい、早く馬車に乗れ。式場へ向かう」


冷たい瞳で男を見下ろしたまま、リヴァイは座り込んでいるシュテフィに声を掛ける。
こんな男に構っている暇があるなら別のことに使わなければ、ただの時間の無駄だ。


「……でも、エミリさんは……?」


下へ飛び降りたエミリは無事なのだろうか。
先に彼女の安否を確認しに行った方が良いのではないか、シュテフィの頭は式のことよりもエミリのことでいっぱいだった。


「……エミリは、俺にお前を任せると言った。なら、俺はあいつの判断を信じるだけだ」


橋の向こうを見ながら話すリヴァイの顔は、調査兵団兵士長の顔をしていて、シュテフィの目から見てもとても逞しいものだった。
自分は兵士でも何でも無いが、少しだけリヴァイを尊敬する彼の部下の気持ちが分かったような気がした。


「心配しなくても、あいつはここから飛び降りて死ぬような奴じゃねぇ。だから今お前がやるべき事は、命を懸けてお前の大切なもんを取りに行ったあいつのために、式を挙げることだ」


『わかったか』と年押しするリヴァイの姿と言葉に、シュテフィの身体の震えが止まった。さっきとは比べ物にならない程、頭と心は冷静になっていた。


「……エミリは、後で俺がちゃんと迎えに行く」


馬車の中で窓の外を見ながら話すリヴァイの瞳には、きっと、エミリしか見えていない。
何故だか分からないが、シュテフィの目にはそんな風に映った。

そして思った。

リヴァイの中で、エミリという存在は大きくなりつつあるのだと───

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