Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第9章 幸福
「おっ! エミリ、良かったね〜」
「間に合ったか」
「はい!」
30分程馬を走らせようやく式場へ戻って来た三人は、エーベルが調査兵団用に別で用意をしているという客室へと向かう。まずはエルヴィンとミケと合流しなければ。幸い、式もまだ始まっていない。少し時間に余裕ができた。
「……ところで、兵長? あの、どうして私は…抱えられているのでしょうか……?」
馬を繋いでから病院と同じくエミリを横抱きに抱えながら歩くリヴァイに、控えめに問いかける。
リヴァイはエミリに呆れた視線を送り言った。
「こっちの方が早ぇだろう」
「いや、確かにそうなんですけど……杖があれば歩けますし……」
「そんなモン使ってたら歩く速度が遅くなるから、こうして抱えてんだろうが」
確かに、松葉杖で歩くエミリに合わせていたら時間の無駄だ。
リヴァイも散々振り回され、式が始まるまで少しでも休みたいだろう。エミリは黙って言う事を聞くことにした。
「まあまあ。リヴァイもエミリが心配なんだよ! ねぇ?」
「うるせぇぞクソメガネ」
冷やかしの口調を送るハンジが鬱陶しくて、リヴァイは盛大に顔を歪め舌打ちを打つ。更に機嫌が悪くなってしまった。
部屋に着き、一度エミリをハンジの隣へ降ろしたリヴァイは扉をノックする。中から『はい』と聞こえてきた声はエルヴィンのものだ。
「エルヴィン、俺だ。入るぞ」
一声かけ、扉を開く。
中では、来客用のソファに腰掛けるエルヴィンとミケの姿があった。二人はエミリの姿を見るとホッと息をつく。
「ちゃんと手当をしてもらったようだね」
「あはは……リヴァイ兵長に…ですが」
エミリの言葉に、エルヴィンは少しばかり目を見開く。医者にやって貰ったのではないのだろうか。そんな疑問よりも、リヴァイのエミリに対する態度に驚いた。
「随分と入れ込んでいるようだな。リヴァイ」
「チッ……おい、エミリ。余計なこと言うんじゃねぇ」
「え……?」
さっきのハンジと全く同じ言葉を発するエルヴィンと、益々機嫌が降下していくリヴァイの様子に、エミリは首を傾げる。
そんなリヴァイは、エミリの隣でニヤニヤと笑い続けるハンジの頭を引っぱたいていた。