Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第9章 幸福
「エミリ! ドレス調達してきたよ〜!!」
リヴァイと二人で部屋で待っていると、ハンジが看護師に連れられてやって来た。手には大きな袋が下げられている。
「すみません、ハンジさん」
「いいのいいの! さ、リヴァイは外に出てて!」
「ああ」
ハンジと入れ替わりでリヴァイが外へ出て行く。扉を閉めたハンジは、早速袋の中からドレスを取り出した。
ハンジが選んだのは、レモン色のロングドレスで、それに合わせて白のボレロが一緒になっていた。これなら、腕や脚の怪我はあまり目立たなくて済む。
靴は、ドレスと合わせてもあまり違和感の無い、ゆったりと履けるサンダルを選んでいた。
「すみません、ハンジさん。ありがとうございます」
「ホントだよ!! 戻って来たと思ったら、リヴァイは慌てて馬に乗って行っちゃうし、何事かと思ってシュテフィさんとこの従者から話を聞いた時は私もビックリしたんだよ?!」
「……え、兵長が……?」
ハンジの話によると、あの後リヴァイはエミリが頼んだ通り、シュテフィを式場へ連れて来たのだそうだ。エルヴィンに彼女らを預けたリヴァイは、その後すぐに馬に乗って来た道を再び引き返して行ったらしい。
「何がリヴァイを動かしているのか分からないけど、随分エミリに入れ込んでるみたいだね」
「……私?」
ハンジの脳裏にあるのは、エミリが失恋したあの日の夜のこと。
エルヴィンと二人で話をしていた時、部屋の窓から見えたエミリとリヴァイの姿に興味が湧き、エルヴィンと二人で観察していた。
リヴァイがエミリを抱き寄せたところを見た時は驚いた。それはハンジだけでなく、エルヴィンもだ。
「エミリ、一体リヴァイに何したの?」
「え? いや……何もしてませんが……」
ハンジの質問の意味がいまいち理解できないが、取り敢えず何かした覚えは無いため事実の通り返答しておく。
(よし! 今度、エルヴィンと議論してみよう!)
どうせリヴァイ本人に問い質しても、彼ならいつものようにクソメガネとか言って追い払うだろう。
リヴァイのことは、彼が調査兵団へやって来た時から興味の対象だった。最初の頃はしつこく付きまとっては観察していたものだ。最近はそんな事していないが、エミリのお陰でテーマができた。