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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第9章 幸福




「……え」

「『え』じゃねぇよ」


エミリが診察を受けている間、ずっと医者の視線が気になっていた。
怪我の度合いを確認しながら、破けたドレスの生地から覗く下着や白い太腿にチラチラと視線を動かしていた。

エミリは気づかなかったが、後ろから見ていたリヴァイにはバレバレだ。だからエミリを外へ連れ出した。
このままあの医者に手当をさせていたら、おそらく手当の一環だと誤魔化してエミリの肌に触れていただろう。


「あいつらがお前の父親を慕っていた理由がわかった」

「……あいつらってマンフレートさん達ですか?」


リヴァイが思い出すのは、ホフマン家の現当主であるマンフレートと初めて会った時のことだ。

彼らと出会うまで、貴族は全て裕福な暮らしに溺れ、自分よりも階位が下の者達を見下してばかりだと思っていた。けれど、そうでは無いホフマン家と出会い、彼らとの繋がりは悪くないと思っていた。

そんなホフマン家が言った、貴族の元で働く医師に好感が持てないという言葉に尚更共感できた。


「まあいい。とにかくさっさと手当するぞ」

「あ、はい」


救急箱を開けたリヴァイは消毒液を取り出し、エミリの体に大量にできた傷を一つひとつ消毒していく。


「いっ……」


傷口にそれを当てる度、じんわりと体に染みる感覚が痛くてエミリは目の淵に涙を浮かべながら顔を歪めた。

優しく包帯を巻き、左腕に固定具を巻き付ける。
あんな医師だが腕は確かのようで、左腕も骨折していると診断された。右足首と同じく怪我の大きな場所だった。

両腕が終われば今度は足だ。


「……悪いな」

「い、いえ……!」


そう言葉をかけ、リヴァイは床に膝を付いてドレスの裾に手を掛ける。傷だらけの太腿が露わになり、リヴァイはまた消毒を始める。

その間、エミリは顔を真っ赤に染めながら別の場所へ視線を逸らしていた。手当とは言え、場所が場所だけに異性に体に触れられるのはやはり緊張する。


「ん……」


リヴァイの手が自分の太腿に当たる度、心臓がドクンと跳ね、むず痒い感覚がエミリの心を覆う。初めての事に、呼吸をするのも大変だった。

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