Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第9章 幸福
「全治三ヶ月くらいですかねぇ」
診察室で一通り体を診てもらったエミリに告げられた言葉だった。
思っていた以上に回復に時間が掛かるようだ。これでは壁外調査に出るどころか、訓練すらもまともに出来ない。
「入院を薦めます」
「……入院……」
「はい。暫くはベッドの上で安静にするように」
「……わかりました」
まさか回復にここまで掛かるとは思っていなかった。
来月には新兵も入団して来る上に、二ヶ月後には壁外調査の予定が組まれているというのに……
だが装備も何も無いドレス姿で、20mもある橋から飛び降りたのだ。自業自得と言っていい。
「取り敢えず、手当をしますのでそこのベッドに横になって下さい」
「あ、はい」
医師に指示された通り、椅子から腰を上げベッドへ移動しようとした。しかし、
「え」
「…………」
リヴァイに腕を掴まれ動きを止められる。
何事かと振り向き、見上げているとリヴァイは医師を見下ろしながら言った。
「てめぇ、それでも医者か」
「兵長……?」
「な、何を……!」
「道具だけ渡せ。こいつの手当は俺がやる。これでも壁外へ戦いに出ている身だ、傷の手当くらいはできる」
目を細め、医者を睨みつけ冷たく言い放つ。
何故リヴァイがそんな態度を表しているのかがわからなくて、エミリはリヴァイを見上げただ困惑していた。
医者は大人しくリヴァイに救急箱を渡す。そして何故か、悔しそうに唇を噛み締めていた。
「エミリ、これ持っとけ」
「え!?」
救急箱をエミリに預け、診察室の扉を開けたリヴァイはさっきと同じようにエミリを抱き上げ部屋を出て行く。
そのまま近くにいた看護師に頼み、空き部屋へ案内してもらう。
中へ入ったリヴァイは、部屋に設置されてあるベッドへエミリを降ろした。
「あの、兵長……? いきなりどうしたんですか……?」
「あ? お前、気づいてねぇのか」
「へ?」
眉間に皺を寄せるリヴァイに、エミリはただ事ではないと察する。
「さっきの医者、ずっとお前を変な目で見ていただろうが」