Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第9章 幸福
エミリを医者に診せるため、リヴァイは近くの病院へ馬を走らせる。
ベーゼ家の男によって足止めを食らっていたシュテフィのため、式は準備のため三時間程延長となった。
その間に診察と着替えを終えることが出来れば、式に間に合う。
病院に到着し、馬を繋いだリヴァイはエミリを抱え院内へ入る。
勿論、横抱きにされ運ばれるエミリは既に院内で順番を待っている患者や看護師の注目の的となった。
「……あの、兵長」
「何だ」
「その、降ろして頂いても」
「駄目だ」
「いや……でも、目立ってますし」
「静かにしてろ」
エミリに睨みを効かせ強制的に黙らせる。リヴァイに抱えられながら、エミリはガックリと項垂れた。
リヴァイは真っ直ぐに受付の方へ歩いて行く。
「こいつの手当を頼みたい」
「それでは、こちらに必要事項を記入して下さい」
受付に立つ看護師から一枚の紙を受け取り、エミリを椅子に座らせ、その横にリヴァイが腰掛け彼女の代わりに用紙に筆を走らせる。
「えっと……それくらい自分で」
「お前は大人しくしてろ」
「……はい」
もう何を言っても聞いてもらえなさそうだ。
いや、本来ならこのままベッド行きなところを特別に式に参加する許可を貰えた。これ以上、我儘は言わない方がいい。
記入を終えたリヴァイは受付へ紙を提出しに立ち上がる。戻って来ると、今度は無言でエミリをじっと見下ろす。
リヴァイに見つめられ、エミリは訳も分からず瞬きを繰り返し見上げていると、突然、リヴァイがジャケットを脱ぎ始めた。
「……え、兵長?」
いきなり上着を脱ぎ始めたリヴァイの行動が読めずあたふたする。
そんなエミリを他所に、ジャケットを脱いだリヴァイはそのままそれをエミリの肩へ掛けた。
「……えっと……」
再びエミリの隣の椅子へ腰掛けたリヴァイは、足を組みながら口を開く。
「その格好じゃ余計に目立つだろうが。羽織っとけ」
そう言って、リヴァイはエミリから視線を前に移す。
ドレスは破れ、肌が必要以上に晒されている状態。これでは、いくら病院の中であれ男から変な目で見られることは間違い無い。
リヴァイの気遣いに、エミリはギュッと上着を握った。