Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第9章 幸福
「で? これからどうすんだ?」
男はエミリの腫れ上がった足首を見ながら問う。そんな事をわざわざ聞かなくとも、エミリがどうしたいか、何となく分かるが一応念のためだ。
「……橋の上へ戻りたいです」
「そう言うと思ったよ。だが、その足じゃ無理だろ?」
「…………それでも戻ります。おじさん、ありがとうございました」
エミリは指輪を落とさないようにギュッと握り締め立ち上がる。近くの木に手を置いて、右足を引き摺りながら左の足で少しずつ前へ進む。
そんなエミリの様子に、男は呆れたように溜息を吐いた。
「ったく、お前さんはもうちょい、人を頼るってのを知る必要があるな」
「……え?」
「おぶってやるよ、上までな。そんな姿の嬢ちゃん、流石の俺様も放ったらかしにできねぇや」
「えぇ!? で、でも……」
「オマケに結構美人な顔の作りしてるしなぁ。そのまま他の男と鉢合わせでもしたら、そいつらの餌食だぞ」
エミリの前へ移動し、背中を見せてしゃがみ込む男の行動に戸惑うエミリだが、今は時間が惜しい。
『失礼します』と一言添えて、彼の肩に手をついた。
「失礼ついでにもう一つだけ……時間が無いので、急いでもらえますか?」
「はっ……言われなくてもわかってるよ。しっかり掴まってな!」
そのままエミリを軽々と担ぎ、男は走り出した。
「そういえば、おじさんの名前聞いてませんでしたね。私、エミリ・イェーガーといいます」
「……そうか。俺はケニーってんだ」