Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第9章 幸福
「……ったあ……」
小さな木の塊がクッションとなり、取り敢えず助かったエミリは、体に枝が刺さる痛覚に耐えながら状態を起す。
ドレスはビリビリに破け、髪はボサボサ、頬や手足には切り傷ができ、なんとも痛々しい姿となっていた。
ドレスを買ってくれたエルヴィンには申し訳ないが、嘆いている暇はない。シュテフィの指輪を探さなければ。
「……確か、この辺で合ってるはずだけど……」
指輪が森の中へ落ちて行く光景はしっかりと目に焼き付いていた。その辺りを狙って飛び降りたは良いが、あんなにも小さな物を本当に探し出すことができるだろうか。
不安はあったが、そんなことを考えている暇があるなら指輪を探そう。エミリは近くの叢を掻き分け、一本一本枝を確認していく。
ズキズキと全身が痛くて仕方がない。
それでも、体に鞭を打って探し続けた。しかし──
「…………見つからない」
指輪らしき物は、見当たらなかった。
上はどうなっているだろうか。
シュテフィのことはリヴァイに頼んだ。彼がなんとかしてくれているだろう。
(会ったら絶対どやされるな……)
飛び降りてすぐ、リヴァイの怒鳴り声が聞こえた。
よく無茶をするエレンに怒鳴ってきたが、これでは人のことを言えない。自嘲し、再び立ち上がる。
「っ!?」
その時、右足首に強い痛みが走った。
座り込み確認してみると、青く腫れ上がった自身の足首が目に入る。
「……最悪だ」
おそらく落下した時に出来たのだろうが、指輪を探すことに必死で今まで気づかなかったらしい。気づいていなかったとはいえ、よく歩き回れていたものだ。
少し動かしただけで激痛が走るが、それでも探すしかない。
エミリは痛みに顔を顰めながらもゆっくりと立ち上がり、右足をかばいながら足を動かそうとするが、バランスを崩してその場に倒れ込んでしまった。
「……もう、なんで……」
悔しさに涙が流れる。
ただ、エーベルとシュテフィの結婚式へ来ただけ。
二人の門出を祝えるのを楽しみにしていたというのに、何故こんな事になってしまったのだろう。
涙を拭いながら傷だらけで痛む身体を起こした。その時──
「……嬢ちゃんの探し物はこれか?」