Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第9章 幸福
「御子息のエーベル殿とシュテフィさんの結婚式に、我々も是非、出席してほしいとのことだ。今、ここにいる五人で参加させて頂く予定だが……」
そこへエルヴィンの視線がエミリへ移る。それに釣られるかのように、リヴァイ達も再びエミリに注目した。
「わかりました。式はいつですか?」
しかし、エルヴィンが用意した菓子を既に三つも平らげていた。
これはもう、何も心配しなくて良さそうだ。四人共、同じことを思った。
「二週間後だ。その間に、礼服を用意しておいてくれ」
「……礼服、ですか」
エルヴィンの指示に、エミリは溜息を吐く。
礼服、つまりはドレス。落ち着きの無い自分には縁遠いものだ。
それでも結婚式に出席するのであれば、きちんとした服装ででなければならない。
別に嫌というわけではない。エミリも女の子だ。ドレスを着てみたいと思ったことは何度もある。
(ていうか、その前にお金は……?)
ドレスなど、一般兵士である自分の給料で簡単に買えるような代物ではない。
新たな悩みが増えた。
「……あの〜、私、ドレスとか持ってないですよ?」
「ああ。勿論分かっている。君のドレスについては、こちらで金を出すから心配無いさ」
「すみません……」
「なんなら、明日にでも一緒に買いに行こうか?」
「え、エルヴィン団長とですか!?」
まさかのエルヴィンからのお誘いに、エミリだけでなくその場にいた者全員が驚いた表情をする。
ハンジ達も、そんなことを言うエルヴィンを見るのは初めてだったからだ。
「嫌なら断ってくれても構わない」
「い、いえ……とんでもないです! お願いしたいです!!」
パーティー用のドレスのことなどさっぱりわからない。エルヴィンがいてくれるのであれば心強い。
連絡事項を伝え終え、解散となりエミリが団長室を出て行く。
静かになった部屋で騒ぎ出すのはハンジだ。
「ちょっとエルヴィン、一体どういう風の吹き回し? 自分からあんなこと言うなんてさ……!!」
「いや……なんと言うか、彼女を見ているとつい甘やかしたくなってな。……少し父親になったような気分だ」
「「「…………」」」
エルヴィンのどこかズレた発言に、三人は返す言葉も無かった。