Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第9章 幸福
ハンジと共にエルヴィンのいる団長室へ向かえば、そこには来客用のソファにエルヴィンだけでなく、リヴァイやミケも腰掛けていた。
似たようなことが前にもあった気がするが頭の隅に追いやる。
エルヴィンに座るよう促され、ハンジの隣へ腰を下ろした。
「エミリ、わざわざすまないな」
「い、いえ……!」
あまりエーベルのことを思い出させたくないのか、エルヴィンは申し訳無さそうに眉を下げる。けれど、エミリはもうすっかり立ち直っていた。
生憎と終わったことを引き摺るような性分では無い。気持ちの切り替えが早いところは、エミリの一つの長所だ。
「随分と前向きなんだな。リヴァイが君を気にかける理由も少し解る」
「え?」
「おいエルヴィン、さっさと話を進めろ」
エルヴィンの言葉の意味が理解出来ず、エミリは首を傾げる。楽しげに微笑むエルヴィンに、リヴァイは面倒臭そうな顔をしていた。
エミリの隣ではハンジがニヤニヤしながら笑っていて、ミケはいつものようにスンと鼻を鳴らす。
「……では、本題に入ろうか。今回、ホフマン家から届いた手紙の内容は……結婚式の招待だ」
まさかの話の内容に、リヴァイ達の空気が固まる。
そこに、紅茶の入ったティーカップが、カチャリとソーサーへ置かれる音が団長室に小さく響いた。
それをやったのはエミリだ。
もしや、今のでショックを受けているのではないか。
全員、チラリとエミリへ視線を向けた。
「えっと……エミリ?」
「はい?」
控えめな声でハンジが呼び掛けると、エミリはケロッとした表情で返事を返す。
意外な反応にエルヴィン以外の三人が面食らったような顔をする。
「どうかしました?」
「え、いやぁ……その……」
「もしかして私のことですか? 全然大丈夫ですよ。あ、エルヴィン団長、どうぞ続けて下さい」
ショックを受けるどころか話の続きを促すエミリはピンピンしていた。元気が無かった時のことが嘘のようだ。
そんなエミリの様子に、エルヴィンはフッと微笑む。エミリから視線を外し、四人へ顔を向ける。