Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第8章 涙
シュテフィを引き連れ、屋敷へ到着したエミリは使用人に頼んでエーベルの元へ案内してもらう。
案内先の部屋では、エーベルは父のマンフレートと共に、エルヴィンとハンジの壁外調査や巨人についての話を聞いていた。
「……さ、シュテフィさん」
優しく、シュテフィの背中を押す。
「私、ここで見てますから」
「エミリさん…………はい、行ってくるわ」
ようやく告白する勇気を持てたシュテフィは、ゆっくりと部屋に足を踏み入れ、談笑中のエーベルへ声を掛ける。
「エーベルさん」
「シュテフィ!」
彼女の存在に気づいた四人は話を止めた。シュテフィの表情から、何かあったことが伺える。
エーベルは、ソファから立ち上がり彼女の元へ歩み寄る。
「どうかしたのかい?」
「エーベルさん……私、婚約を申し込まれたんです」
「え……」
シュテフィの話を聞いたエーベルは驚いた顔を見せる。そこには、ショックの表情も混じっていた。
そんな彼の反応を見たエミリは、それで確信する。
エーベルもシュテフィのことが好きなのだということを……
チクリと胸が痛む。それでも、エミリは二人から目を逸らすことはしなかった。
「相手は……ベーゼ家の方です」
ベーゼ家は、王家の使用人を務めている貴族の名だ。
ホフマン家と同じ上流階級の位置にいる貴族だが、彼らとは反対に傲慢で欲深い者達が集まったような一族だ。
勿論、そんな奴らに求婚されたと聞いたエーベルは良い気はしない。
「君は、その話を……」
「受けるつもりはありませんでした。けれど、断れば私の家の地位を奪うと…………でも、でも私は! エーベルさんのことが好きだから……!!」
「!?」
(言った……!!)
緊張感と不安、勢いに任せて伝えた"好き"の言葉。
エーベルは、嬉しそうに微笑みシュテフィを抱き締めた。
「ありがとう。僕も……シュテフィ、君が好きだよ」
「……エーベル、さん……!!」
「ベーゼ家のことは安心して、僕がなんとかするから」
「はい……!」