Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第8章 涙
「まあ……! ということは、貴女がかの有名なイェーガー先生の娘さん?」
「え、父をご存知なのですか?」
「ええ! エーベルさんからもお話は伺っていますし、イェーガー先生は貴女が思っている以上に、王都では結構有名なお話なんですよ?」
驚いた。
交流があったホフマン家だけに限らず、他の貴族の間でも有名だったのか。
「エミリさんのお話も、エーベルさんから少し聞いておりました。妹のような存在だと」
「……ありがとうございます」
”妹のような存在”
予想はしていたが、こうして突きつけられると胸が傷んだ。
わかっていたけど心が痛いのは、本当に自分がエーベルを好きだということ。
再会したあの日から、何度もエーベルに気持ちを伝えようとした。そして、ケリをつけるつもりだった。なのに、会えば言葉が出ずにそのままいつものように談笑して終わるだけ。それを繰り返して、もう三ヶ月も経っていた。
でも、それももう……終わりになるだろう。
シュテフィを見た時のエーベルの表情は、とても嬉しそうなものだった。そして彼女も同じ。二人は両想いなのだろう。
(潮時、か……)
二人に気づかれぬよう、深く溜息を吐く。
それはとても重たいものだった。
「シュテフィ、今日も家に上がって行くかい?」
「あ、いいえ。少しお話出来れば良かったので、今日はこれで失礼致します」
「そうか……じゃあ、また」
「はい」
嬉しそに、少し寂しそうに微笑み合い、シュテフィはエミリにも会釈をしてから屋敷を出て行った。
しかし、気の所為だろうか。シュテフィがとても、悲しそうな顔をしていたのは……
(どうしたんだろう……?)
エミリは暫く彼女のことが気になって仕方が無かった。