Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第8章 涙
(なら、私は……?)
そこがエミリの言いたいところだった。
自分には何がある?
何が出来るのだろう?
自分に出来ることを見つける。それがいまのエミリの目標だが、全く近づけていない。
こうしている内に、ペトラ達はどんどん実力を上げている。
焦りしか無かった。
「私に出来ることって何なんだろう……」
「さあね。それはエミリが自分で見つけなきゃ。でも、エミリは既に持っているよ。君だけの大きな力がたくさんね」
「え」
思わずエーベルの顔を見上げる。彼は優しい笑みを浮かべているだけで、それ以上の意味を教えてはくれなかった。
屋敷へ戻る最中、ずっとエーベルの言葉を何度も心の中で繰り返し、考えてみたが答えは出て来なかった。
屋敷の門を潜り、玄関までの長い道を進んでいると一人の女性が目に入る。
(誰……?)
顔は見えないが、長く美しい金髪、白地のドレスは清純でお淑やかな雰囲気を醸し出していた。
「シュテフィ!」
「!」
隣に歩いていたエーベルが声を上げると、その女性はエミリ達の方へ振り向く。
そこで彼女の顔を初めて見たエミリは息を呑んだ。
色白の肌に大きな目。瞳はエメラルドグリーンのように美しく輝き、惹き付けて離さない。とても、綺麗な人だった。
「エーベルさん、こんにちは。そちらは?」
優雅に頭を下げたシュテフィと呼ばれた女性の視線は、エミリへ向けられる。
「この子はエミリ。今年、調査兵団に入った兵士で僕の昔馴染みなんだ」
「そうだったのですね」
エーベルがエミリの紹介をしたのと同時に、慌てて頭を下げる。シュテフィは、どこかホッとしたような面持ちでふわりと微笑んだ。
「初めまして。私、シュテフィと申します。以前、パーティでエーベルさんと知り合ったことが切っ掛けで、よく屋敷にお邪魔させて頂いているんです」
「は、初めまして! 調査兵団に所属しています、エミリ・イェーガーです! よろしくお願い致します!!」
落ち着きのあるシュテフィとは反対に、エミリはいつもよりも少し大きな声で名乗り、敬礼をした。
何故か、心が落ち着かなかった。
緊張と、そして……不安と、心臓がドクドクと脈打つ。