第48章 花井くんのはなし②
のぞみ「考え事?」
花井くんはふーっと息をはき、私を横目で見つめる。
花井「あー。こないだ試合に負けた後、野球部の目標を統一したんだよ。」
のぞみ「甲子園優勝でしょ?」
花井くんは目を丸くする。
花井「あー。やっぱお前は田島の彼女だな。」
のぞみ「やっぱ目指すのはてっぺんでしょ!?」
花井「おお。俺も今はそう思える。」
のぞみ「うん!」
花井「目標決める時さ、俺なりに思い切って甲子園出場って書いたんだけど、田島はあっさり全国制覇って書いたんだ。キャプテンのくせに情けねー。」
のぞみ「そっか…。」
花井「俺ってやっぱ器が小さいのかねー。やっぱ田島はすげーな。」
花井くんは手を頭の後ろにやり、上を向く。
のぞみ「花井くん…。」
花井「田島は俺にはないものを持ってるし、努力うんぬんってよりまず、あいつの素質は別格だ。そんで俺はいっつも、田島には敵わないって見て見ぬ振りしてたけど、やっぱ悔しいんだよな。あいつに負けんのが。それに俺が田島と競わねーと、誰が田島と競うんだって。このままじゃあいつが1人になっちまう。」
花井の脳内に、モモカンの「田島君を1人にしないで」という言葉がよぎる。
のぞみ「田島が1人…。」
花井「だから俺があいつのライバルになるって決めたんだ。俺と田島が競い合えば、まわりも絶対ついてくるはずだし。」
のぞみ「うん!」
花井「んで、あいつの視野に入るためにはどうなればいいのか考え込んでたら怪我しちまった。」
花井くんはヘヘッと笑う。
のぞみ「なるほど、そうゆーことか。で、答えは見つかった?」
花井「おー!俺がホームラン打者になる。そんで、あいつがヒット打って、俺がホームに返すんだ。田島は唯一ホームランが打てないからな。」
のぞみ「うん!いいじゃん!」
花井「おー。でもまだ俺なんて田島の足下にも及ばねーよ。だけど、ぜってー抜かしてやる。」
花井くんの言葉に力がこもる。
のぞみ「そういえば…。」