第47章 花井くんのはなし①
花井くんは器用に布を縫い合わせてゆく。
大きな手のひらに長い指、思わず惚れ惚れしてしまう。
花井くんのメガネ姿もなんかかっこいい。
ついじっと花井くんのことを見つめてしまう。
花井「んな、見つめんなって。緊張すんだろ」
花井くんが急にこっちを向き、びっくりする。
のぞみ「え!? あ、ごめん。」
花井「別に謝んなくてもいいって。」
やれやれっと笑う花井くん。
そういえば…。
のぞみ「花井くんは保健室に何しに来てたの? もしかして、しんどいとかじゃないよね!?それだとこんなことしてもらってる場合じゃない!」
花井「ちがうちがう。美術でちょっと指切ってばんそうこう、もらいにきただけだし。」
花井くんは、ばんそうこうのついた左手の指をチラチラふる。
のぞみ「え!?大丈夫?」
こんな器用な花井くんが美術で怪我なんて珍しい。
花井「おお。対したことねーのに先生が行けってうるさいから。」
のぞみ「そりゃ、花井くんってピッチャーもしてるんでしょ?気をつけないと!」
花井「そーだな。てか俺が投球練習してんの知ってんだ。田島か?」
のぞみ「ううん、三橋くんが言ってた。花井くんが本気でピッチャー目指したら敵わないって本気で悩んでたよー。」
花井「あいつー! あいつがエースだっつってんのに。ほんと余計なこと悩むよな。」
のぞみ「三橋はほんとネガティブだから。」
花井「まー最初に比べたらマシになってきたけどな。」
それより私は気になることがある…。
のぞみ「確かに。それより花井くんが美術で怪我とかあんま考えられないなぁー」
花井くんのばんそうこうを眺め、首を傾げる。
花井「あー。ちょっといろいろ考え事してたからなぁ。」