第30章 お兄ちゃんと阿部くん。
のぞみ「その人、どんな人なのー?」
阿部くんはだるそうに答える。
阿部「んー。あー。すんげー、豪速球。ノーコンだけどな。でもまぁ素質で言えばプロも夢じゃねーレベル。打撃センスも悪くない。」
褒めているのに、どこか不満ありげな言い方の阿部くん。
のぞみ「へー!ノーコンなんだ!」
おお!いきなりお兄ちゃん、いじれる要素きた!
阿部「まぁ取れねー俺が悪いんだけど。てかなんで嬉しそうなわけ?」
のぞみ「いや?そんなことないよー。てかその人の面白いエピソードとかないのー?」
ちょっと唐突すぎたかな?
阿部「は?なんだよ急に。」
のぞみ「変なあだ名とか変な癖とか変な趣味とか!」
阿部「なんか、榛名に恨みでもあるわけ?」
のぞみ「えっ!?いやー、ただピッチャーって変わった人が多いっていうじゃん?その人もそうなのかなーって」
阿部「確かに変わってるったら変わってるな。すんげー自己中だし。」
たしかにー!昨日もノックしないで勝手に部屋入ってくるし。お兄ちゃんが構わなくても、私が嫌だってんのに。
のぞみ「そーなんだ。性格はよくなかったんだねー」
阿部「でも本当は、そんな悪いやつではないと思うんだよな。だからそれが逆にむかつく。」
のぞみ「そーなんだ…。」
阿部「おお。なんか、すんげー家族思いだったりするしさ。ただの冷血ヤローではないみてーでさー。はっきりしろよな。あー。あいつのこと考えんとイライラしてくる。」
のぞみ「家族思い…?」