第29章 阿部くんの話。
昨日はほんと恥ずかしかった。思い出すだけで顔が赤くなる。田島って変なスイッチ入るとほんと別人みたいになる。そういう田島も嫌いじゃないけど、ちょっと怖い。
学校で田島に会うのが恥ずかしい。でもそう思ってるのはきっと私だけなんだろうな。
ちょっと複雑な気分…。
朝練が終わって、ちょっと水浴びしに手洗い場に行くと阿部くんがいた。
のぞみ「おはよ、阿部くん。」
阿部「あぁー。つか誰だっけ?」
阿部くんが顔を洗いながら聞いてくる。
うわ、気まずい。
田島から阿部くんの話はよく聞くし、それに昨日はお兄ちゃんまで阿部くんの話してくるから、勝手に知り合いになったつもりでいた。
一方的に知ってるってすごい気まずい。
のぞみ「あぁー、あははっ。」
ここは笑ってごまかすしかない。
阿部が洗っていた顔をあげ、私の顔を見つめる。
阿部「あー。思い出した。田島の彼女だ。教室で田島に迫られてた。」
ん?
そういえば、田島にキスされそうになった時、阿部くんが教室入ってきて…。
のぞみ「そ、そういえばそんなことも…」
阿部「おー。」
のぞみ「てか、田島にいいアドバイスしてくれてありがと! あんまガツガツしなくなった…かな?」
阿部「どっちだよ!」
阿部くんが大きな声をだし、私はびっくりして顔をあげる。
阿部「あー、わりー。」
どうやら大きな声を出したことに謝っているようだ。阿部くんは一見、怖そうに見えるが意外と優しい。まぁ田島から阿部はいいやつだと聞いているから知ってるけど改めてそう感じる。
のぞみ「いやいや、気にしないで?」
阿部「おー。てか名前なんつーの?おまえ。」
阿部くん、ほんとマイペースだな。
のぞみ「榛名のぞみ。」
阿部「榛名…?」
のぞみ「うん。そーだよ?」
もしかしてお兄ちゃんのこと思い出してんのかな?私が不思議そうな顔をしたからだろうか。
阿部「あー。昔、榛名ってやつとバッテリー組んでたから。ちょっと気になっただけ。」
阿部くんとお兄ちゃんって、どんなバッテリーだったんだろ。少し気になる。
ここで、すぐ妹とバラしても面白くない。
ちょっと探ってみよっと。
お兄ちゃんをバカにできるエピソードとかないかなぁー!