第14章 田島のけが
西浦は夏の大会で桐青高校と対戦した。
桐青高校は野球に詳しくなくても知っているくらい有名な強豪校だ。
西浦は不利と言われつつ、なんとか三橋くんが一点差に抑えて勝利を勝ち取った。
試合には勝ったが、田島はエース高瀬のシンカーをグリップをずらして打つという特殊な打ち方をしたため右手を負傷した。
田島「んー!打ちてー!大丈夫なのにー!」
田島は横でだだをこねている。
のぞみ「大丈夫じゃないからテーピングしてんでしょ?」
田島「んー。そーだけどよー。打ちたいー!厳密に!!」
田島は私の横で寝そべりながら、ゴロゴロしている。
のぞみ「もー。でも、そのシンカーってやつ打てたとき気持ちよかったんでしょ?」
田島の顔が明るくなる。
田島「おお!すんげー気持ちよかった!」
のぞみ「なら、いいでしょ?」
田島「んー。確かに?」
田島はうなりながら考えている。ほんと、野球バカだなぁ。
のぞみ「試合、いっつも見に行けなくてごめんね?」
これは本当に申し訳ない。普通、彼女だったら応援行くよね? んでレモンのハチミツ漬けとか渡して…。
田島「それは仕方ねーよ!のぞみだって、テニスあんじゃん!そーいえば、このごろテニスうまくなってきたんだろ?噂だぜ?」
確かにこのごろ満足のいくプレーが出来るようになってきた。前までは打ち返すので精一杯だったけど、最近はコースを狙ったりできる。いわゆるテニスの駆け引きの楽しさも分かるようになってきたし。
のぞみ「ほんとー? 確かにちょっと前よりはうまくなったかも。」
田島「すげーじゃん! てかのぞみとテニスしてーなぁ。」
のぞみ「んー、でも田島とやったら負けそうやわ。毎日やってんのに初心者に負けたら自信なくすわぁ。」
田島「んじゃ俺、左手でするし!なぁ?」
のぞみ「ももかんがいいって言ったらね?」
田島「おぉ!でも、どーせ右手のせいでいつものメニューはできねーし、多分モモカン許してくれると思うぜ!」
のぞみ「ふふっ。田島とテニスすんの楽しそーかも。」
田島「俺も!すんげー楽しみだぜー。んー!今、俺幸せ!」
田島のその笑顔だけで、幸せやで?
心の中でつぶやく。