第3章 *ひみつの…【梶裕貴】
『さて、今日はどこに行く?』
「それなんだけど、今日はお家でゆっくりしない?」
家でのんびりしたいなんて言うのはいつぶりだろうか。
梶くんはここに行きたい、あそこに行きたい、とたくさん新しいことや面白いものを見つけてくるのが得意だからだ。
かといってそういうことが苦手で常に受け身な私に、代替案があるわけでもない。
「決まり!今日はゆっくりのんびりするぞ〜」
そして思いっきり不健康な1日を過ごすことにした。
映画をネットで借りて、観る。
お昼にピザを頼む。
また映画を観る。
おやつにアイスを食べる。
また映画を観る。
夜に中華の出前を頼む。
「いや〜、あの映画気になってたんだよね。面白かった!」
『面白かった!特にあのシーンの……』
「あー!わかる!!」
そして今。ワインを飲みながら感想を話したりのんびりする。
今日はたぶん100歩も歩いていないのではないか。
1日のほとんどをソファの上で過ごした。
たまにはこんな日もありだよね!
「ねえ〜、みくちゃん〜」
名前を呼ぶ彼の方を見る。
『なに、梶くん。』
酔っているのか、どことなく目がとろんとしている。
「キス、しよ?」
私の言葉を待たず、彼は口を塞いだ。
『んっ…』
「はぁ……、えへへ」
梶くんはふたりの間の銀の糸をぺろりとすると、私を抱きしめた。
「みくちゃん、だーいすき。」
『梶く…んっ…』
かぷっと首筋に歯を立てられる。
『ぁんっ…』
甘噛みされる度、背中をぞくっとする感覚が走る。
「可愛い声。もっと聞かせて?」