第3章 *ひみつの…【梶裕貴】
『コーヒー飲んでて、朝ごはんもうすぐできるから』
「ん〜〜」
キッチンに立つ私を後ろから抱きしめる梶くん。
『なあに、寝ぼけてるのー?』
「んー」
『コーヒー冷めちゃうよー』
「ん」
『どうしたの梶くん』
さっきから「ん」しか言わない梶くんが少し心配になる。
ずっとぎゅーってしてるし……
「みくちゃんに甘えたい気分なのー」
……きゅんっ
なんて可愛い生き物なの……
でもここは自分に厳しく、そして梶くんに厳しく。
『今はあぶないから、ほら座って座って〜』
「みくちゃんのけち〜」
文句を言いながらもちゃんと椅子に座る梶くん。
本当に子どもみたい。可愛いから許すけど。
そして出来上がった朝ごはんを食卓へ運ぶ。
「いつもありがとうね、いろいろ任せちゃって。」
ふと梶くんがぽつりと呟く。
『そんなことないよ、梶くんは忙しいんだし。
それに、私はこうやって、梶くんのごはん作ったりするの楽しいし、幸せだもん。』
これは、本心。
大好きな人のためにする家事なんて、全然苦にならない。
その大好きな人がへへっと笑う。
「そう言ってくれるとこも大好き。
いただきまーすっ!」
『いただきますっ』
何より梶くんがこんな風にありがとうとか言ってくれるから頑張れる。
日常の幸せを噛み締めながら、朝ごはんを食べた。