第5章 本心と本音
なんだよ、それ。
すましたフリして、妬いてるとか…。
全然わからなかった…。
俺だけ、嫉妬してるのかと思ってたけど、違ってた。
それがわかって少し安心した。
それから、ちょっぴり嬉しい…。
「夜海。」
そう呼び、振り向く間もなく、ギュッと抱きしめた。
『ちょっ…苦しい。』
「ごめん。別に夜海とキスするのが嫌なわけじゃないんだ。ただ、夜海からそういう事言われるって思ってなくて、びっくりした。それに、互いファーストキスじゃないし、特別でもない日や場所でいいのかなって。」
『そんなの、いいに決まってる。…特別な日や特別な場所に行ったらまたキスすればいいじゃん…』
夜海はぎゅっと俺の服を掴んで少し震えた声で言った。
「そーだな。本当ごめん。」
『うん。』
「じゃあ、俺と夜海にとってのファーストキスな。」
『…うん!』
それから、見つめ合ってからそっと優しいキスをした。
キスを終えると、
『貴大……好きだよ。』
嬉しそうに夜海が微笑んだ。
「俺も。」
俺はまた夜海を強く抱きしめた。