第5章 本心と本音
『先、部屋行ってて?なんか飲物持っていくから。』
夜海はそう言うと、キッチンの方に向かった。
「おーわかった。」
昔から何度も来たことのある夜海の部屋。
2階への階段を伸びった一番奥の部屋。
ドアを開けると数ヶ月間しか来てなかっただけなのに、妙に懐かしい気がした。
夜海の部屋に入り、いつものように、ベッドに座った。
しばらくして、
ドアの開く音がしてそっちを向くと、夜海がひょこっと顔を出した。
『ごめん、カフェラテしかなかったけどいーい?』
「別にいいけど?」
俺がそう言うと、よかったーっと言ってカフェラテをてーふに置き、俺の隣に座った。
いつもなら、テーブルを挟んだ正面に座るから、いきなりの事でドキッとした。
『ねぇ。』
何を話せばいいものかと思っていると、夜海が小さく言った。
「ん?」
『貴大って前の彼女さんとキスした?』
「ブッ!…ゴホッゴホッ…!」
思いがけない質問に飲んでいたカフェラテを少し吐いてむせてしまった。
『ちょ、汚い…!』
夜海はすぐにテッシュを俺に渡してきた。
「唐突に変なこと聞くからだろ!」
誰だってあの質問には驚くだろう…普通。
『別に変なことでもないでしょ?付き合ってたんだし。
っていうか、その反応からしてやっぱりしたんだ。キス。』
「いや…あれはつい流れというか……。」
隠すつもりはなかったけど、キスして事がバレて、俺は少しでも夜海が傷つかないようにと言った。
『別に誤魔化さなくてもいいのに。私も松川としたし。』
「え。」
ちょ、待って。
なんでこの子こんなあっさりそういうこと言えるの?
ってか俺が誰とキスしようがダメージ無そうだし……むしろ俺の方がダメージ大きんだけど…。
多少は覚悟してたけど……。
『嫌だった?』
振り向いて俺の方を見て言う。
「え…ま、まぁ……。正直言うと。」
『ふーん。』
夜海たったそれだけ言って自分のカフェラテを飲んだ。