第1章 あなたは私の好きな人
「夜海おはよー♪花巻も!」
教室に入ると同じクラスで美術部の石川由紀が元気にこっちにやって来た。
『おはよ由紀今日も元気だね。』
「おはよ、石川。」
高校に入って知り合った由紀だけど、自然と気があって気づけば、一番の親友になっていた。
「だって今日部活じゃん?この間いい所まで描けたから続き描くの楽しみでさー!」
嬉しそうに言う由紀の言葉に思いついたように貴大の方を向いて言う。
『あ、そっか今日部活!……貴大、私今日部活だった!もうすぐコンクールだし、遅くなるからは先に帰ってて!』
そうすれば、今日はカフェ行かなくて済むし、明日からは貴大部活だし時間的に私の方が早く帰る。
来週なんてなれば忘れるだろうー!
なんて思いついた。
だけど。
「いや、待ってる。」
貴大は即答で断る。
『…チッ…。』
「お前そう言ってシュークリーム買わないですむとか思ってるだろ?」
『べ、別にそうなことないってー!貴大いつも部活大変そうだし今日は早く帰って明日でも…。』
「断る。」
『あーもうー!なんでさー!』
「お前の考えはお見通しなんだよ。」
これが幼馴染みの性ってやつ?
私の考えなんて貴大にはあっさりわかってしまう。
スタスタと自分の席に向かう貴大の背中を見てそう思った。
「今度は何したの?」
呆れたように由紀に言われる。
『別に何もしてないんだけど、数3の課題忘れたから見せる代わりに駅前のカフェのシュークリーム奢ることになって…。』
「ありゃりゃ………あ!課題なら私が見せるよ?」
机からノートを取り出して私に差し出す。
『でも由紀数学苦手じゃん。』
由紀はテストの度、あまりにも酷いからと数学の担当の先生に補修やら再テストやらやらされてる。
「そ、そうだけど!今日のはちゃんと教科書見てやったしきっと全問正解だし!」
由紀の気持ちは嬉しかったけど、少し不安があった私は結局貴大に見てせもらった。
その日の数学時、課題の答え合わせをしたら案の定由紀はほとんどはずれていた。
貴大に移してもらった私はと言うと、まさかの満点。
こりゃ完全に奢らないと……。