第3章 雨
※花巻
『なんで、優しくするのよ……。ただの幼馴染みなのに。』
夜海にそう言われて、
昨日松川に言われた事がよぎる。
"俺が夜海とこ貰っちゃうよ?"
そうだ……。
俺達はただの幼馴染み。
けど、俺はずっと……ずっと…前から……。
「夜海………今まで言えなかったんだけど、実は俺さ…。」
『やめてよっ!!』
「!!」
『…もう、やめて…。そういうことが聞きたいんじゃない。……やっと気持ちの整理がつきそうなの…。それなのに、今更そんな期待するような言わないで……。貴大には彼女がいるんでしょ…?!』
その日初めてちゃんと夜海の目を見た気がする。
不安や悲しさの中に何かを決意したかのような瞳。
「悪い……。そうだよな。ごめん。」
俺はそれを見たらそれしか言えなかった。
『だったら、もう帰ってよ…。』
「…わかった。けど、とりあえずこの薬飲めよ。飲んだら帰るから。」
『……。』
夜海はしぶしぶ俺が渡した風邪薬飲んだ。
「じゃあ……本当ごめんな。お大事に。」
俺はそう言うけど、夜海は目を合わせようとはしなかった。
静かに夜海の部屋を後にして、家の外に出た。
外は冷たい風が吹いていて身を震わした。
「もう……手遅れ……ってことか。」
俺は冬空を見上げた。