第3章 雨
『……ん…。』
目が覚めると私は自分のベッドの上にいた。
「気がついたか?」
その声に顔を向けると横で貴大が座っていた。
『私、なんで。』
倒れて、その先の記憶が無い私がそう呟くと、貴大は話しながら、ポ○リを差し出した。
「玄関で倒れたんだよ。だからベッドまで運んだ。
…お前やっぱり、薬飲んでねぇーだろ。つーかもしかして何も食ってねぇの?」
『………。』
それを受け取った私だけど、飲まずに貴大の質問にも答えず目を逸らした。
「はぁ……。そういや、お前昔から体調悪くても寝れば治るとか言って対処しなかったな。」
『…ただの風邪だもん。…寝てれば治るでしょ…。』
「…そんな簡単に治るかよ……。とにかく、ほら、市販だけど風邪薬買ってきたから飲めよ。…空腹時でも大丈夫なやつでよかった。」
呆れたように貴大は私の手に薬を握らせた。
涙が出そうだった。
プリントを届けに来てくれたのも、
心配してくれたのも、
薬を買ってきてくれたり、ポ○リをくれたのも…
全てが。
でも………でも貴大には彼女がいる。
『なんで、優しくするのよ……。ただの幼馴染みなのに。』
辛くなった私はそう聞いた。