第2章 待っているだけじゃ始まらない恋
『よし、鍵閉めたし、帰ろー。』
由紀と居残って、作品を仕上げ、美術室の鍵を閉める。
すると、パンっと両手を合わせて由紀が言った。
「ごめん、夜海!私、今日用事あるのー。」
『いいよー。じゃあ鍵は私が返しとくから先帰っていいよ。』
「本当ごめんねー!また明日ね!」
本当はもう少し一緒にいたかったけど、由紀は大切な友達だし、困らせることはしたくない。
それに、こんな事で駄々こねるほど子供じゃない。
『うん、バイバイ!』
私は笑顔で手を振った。
そのあと、職員室に鍵を戻し、職員室を出た。そしたら、そこには貴大がいた。
『あ、』
貴大の顔を見た途端、なんて声をかければわからなくなった。
「あ……夜海…。お、おつかれ。今終わり?」
『う、うん。バレー部も終わり?早いね。』
「最近体調崩すやつ多くて、今日は早めに切り上げたんだ。」
会話にはなっているけど、いつもよりぎこちなくて、あまり楽しくない。
『へぇーじゃあ貴大も気を付けないとね。』
「お前もだろ。風邪とかインフルとか全国的にハヤってんだから。」
『そーだね。あ、今日一緒に帰れる?』
私がそう聞くと貴大は答えにくそうに言った。
「……悪い。今日はこれからレミちゃんと会う約束してて。」
無駄にその"レミちゃん"というセリフが頭に響く。
『そ…そうだったね!朝言ってたっけ。彼女出来たんだからその子と帰らないとね!ごめんごめん!
じゃあ、早く行ってあげなよ?』
「あぁ、悪い。またな。」
『うん。また明日。』
昨日で現実を受け入れて、諦めたハズなのに、貴大に彼女がいるということを実感させられると胸が苦しくなった。