第1章 蒼き竜と虎の娘①~Surprise Birthday~
海に面した倉庫街。
ありがちな呼び出し場所に、若干呆れながらも、ゆきが無事であることだけを祈って。
重い鉄の扉を開いた。
「!! 大丈夫かっ!?」
そこには、猿ぐつわをして後ろ手で柱に縛り付けられたゆきがいて。
まわりには誰もいなかった。
「すぐ助けてやる」
もしかしたら何かの罠かもしれないと思ったが、とにかく無事を確認したくて駆け寄る。
猿ぐつわをはずし、手のロープもはずせば、潤んだ瞳で抱きついてきて。
「…政、宗…」
「もう大丈夫だ。怪我はないか?」
ぎゅうっと抱き返してから、優しく頬を撫でればゆきはこくんとうなずいて。
やわらかく、微笑んだ。
「誕生日、おめでとう!」
「………………は?…お前、こんなときに何言って……」
ゆきの言葉に、きょとんと目を丸くすると、柱の後ろにあった扉がゆっくりと開いて。
「「「Happy birthday!!」」」
クラッカーが鳴り響き、妹や小十郎、ウチと武田の若衆やらが笑顔で出てきた。
しかも彼らの後ろにはパーティーの用意がしてあって。
俺はますます、目が丸くなる。
「ふふ、びっくりした?」
「……ゆき……」
一気に力が抜けて。
安堵感からか、だんだん笑みがこみ上げてくる。
「…ったく…何してんだよ…」
心配したのだと、頭をくしゃりと撫でれば、ゆきは悪戯っぽく笑んで。
「だって…政宗が乗り気じゃなくても、どうしてもお祝いしたかったんだもの」
ついでに、驚かせたかったし。
そう笑うゆきが愛しくて。
もう一度、ぎゅうっと抱きしめた。
「Thanks.最高のsurprise birthdayだぜ」