第1章 蒼き竜と虎の娘①~Surprise Birthday~
「ウチの組からも人をやって捜させる。手分けして…」
「組長ぉぉ!!た、大変ですぜっ!!」
人海戦術で捜索を、と思った矢先に若衆が部屋に飛び込んできた。
「なんだ、くだらねぇことだったら承知しねぇぞ!!」
「そ、それが…こんなもんが玄関に…!」
若衆が差し出したのは『果たし状』と書かれたものだった。
嫌な予感がして、それを開くと中からジャラッとネックレスが落ちてくる。
「こ、これはお嬢がいつもつけてるものでは…!」
落ちたネックレスを見て、幸村の目が見開かれる。
もちろん俺だって見覚えがあった。
昨年のあいつの誕生日に、俺がプレゼントしたものだったから。
「…武田の娘を預かった…返して欲しけりゃ、俺に一人で来い、だと」
果たし状に目を通して、すぐさま破り捨てる。
「お嬢が誘拐…すぐに助けねば!!」
「stop!」
すぐさま飛び出していこうとした幸村の首ねっこをつかんで、引き止める。
「聞いてなかったのか。俺に一人で来いと書いてあった」
「しかし…」
「心配するな。伊達組の名において、絶対にゆきは助け出す」
武田組のひとり娘を攫っておいて、伊達の組長を呼び出すとは、個人的な恨みか。
どちらにせよ、自分をよく思わない輩の仕業に違いない。
「…必ず、連れて帰る。一人で行かせてくれ」
真剣な視線がかち合って。
幸村の頷きに応えて、ネックレスを手に取り指定された場所へと赴いた。