第7章 若獅子と不良娘①~優しいひと~
幸村はあえて家のことは言わなかった。
制服をみれば近くの高校へ通っていることはまるわかりだし、自然と家へ帰すのが普通だと思うだろう。
幸村はここまで連れてきてくれたが、一般的に考えれば、家へ帰せと言われるか、警察に家出娘として連れていけといわれるのがオチだ。
しかし、お館様はじっと私をみてからひとつ頷いた。
「…話はわかった。部屋はいくつも空いておる、好きなだけ逗留していくがよい」
「ありがとうございます、お館様!!」
あまりにもあっさりとした了承に拍子抜けした私は、引っ張られるように幸村の勢いにつられて一緒に頭を下げるのが精一杯だった。
一体なんなんだ、この人たちは。人がいいにもほどがある。
「服や浴衣はあいつの物を使えばよい。幸村、佐助…後のことはそなた達に任せた」
「はい!!では、失礼致します」
元気よく返事した幸村に連れられて、部屋をあとにした私は今だに現状が把握できない、というより信じられないでいた。
「よかったでござるな!とりあえず浴衣を用意するから、ゆっくり風呂へ入って今夜は休むといいでござる」
にこにこと言う幸村に、じゃあ俺様浴衣用意してくるからー、と仕方なさそうに肩をすくめて佐助は行ってしまう。
そのまま幸村に連れられて、部屋の位置やトイレの場所など教えてもらって、戻ってきた佐助から女物の浴衣を受けとった。