第7章 若獅子と不良娘①~優しいひと~
「…え、何…このおっきいお屋敷…」
幸村が明らかに進んでる方角にはどん、と構えた大きな屋敷が建っている。
「屋敷の主人である方が大変立派な方なのだ!」
なんて言いながら手を引く幸村は、どこか誇らしげだ。
「屋敷の主人って…」
質問をしようとした矢先、玄関に出迎えてきた男の言葉に思わず固まる。
「若頭!おかえりなせぇ!」
わ、若頭…!?っていうかこの口調、もしやテレビとかで聞くあれ!?
「ただいま戻ったでござる。お館様は自室にいらっしゃるか?」
「へぇ!…ん?若頭…誰を…っぇえええ!?」
幸村の後ろに隠れてた私を見つけた彼は、顎がはずれそうな勢いで叫んだ。
「さ、佐助さーん!!一大事です!!若頭が!!若頭が女連れてきましたーッ!!!!」
慌てて走り去る男の声は屋敷に響き渡り、あちこちの部屋から「えぇぇ!?」という声が聞こえると同時、たくさんの足音がこちらに向かってくる。
何!?一体なんなのここ!?
幸村の優しい言葉にうっかりついてきたことを早くも後悔しつつ、チラリと彼を窺えば
「全く騒がしい奴だ。すまぬでござるな」
にこ、と落ち着いた様子で微笑まれた。