第7章 若獅子と不良娘①~優しいひと~
「……何?」
ギロ、と凄まれて鼓動の訳を探る間もなく慌てて拳をとく。
「い、いや、某は決して怪しいものではなく…!助けに入ろうとしていただけでござる!!」
「……」
疑わしげに自分を上から下まで無遠慮にじろじろと眺める彼女の視線に戸惑いつつも、彼女を見遣ると今更ながら気づいた彼女の格好に、幸村は一瞬で思考が凍りついた。
「……な、なな…!?」
「…何よ」
「…お、おぬし……学生か!?」
そう、彼女が着ていたのは制服で。
自分も以前通っていた直近の高校の、女子生徒の制服だった。
「…な、なにゆえこのような時間に女子高生がこのような場所で…は!?まさか学生ではなく、仕事でそのような格好を!?」
「本物の学生だよ!!」
「ぐぉ…!」
慌てるあまり妄想を爆走させる幸村に、ぼくっと先程の鞄攻撃をくらわせる。
「…ぐ…な、なかなかの鞄さばきでござる…とにかく学生ならばこのような場所にいてはあぶな…は!?ま、まさかおぬし…!!ならぬ!!自分の身はもっと大事にせねば!!金と引き換えなど以っての外…!!」
「援交でもねーよ!!」
ごすっ。
二発目はどうやらクリーンヒットしたらしく、うめき声もそこそこに幸村は片膝をついた。