第5章 蒼き竜と虎の娘⑤~約束の杯~
「…小十郎、俺はあいつを妻にする」
話がある、と小十郎を自室に呼び出して、開口一番にそう告げた。
「…武田のお嬢さんですか…?」
「そうだ」
真っ直ぐに小十郎の目を見返せば、小十郎は静かに一度目を伏せて。
次に開いた瞳の視線は、射抜かれるような真剣そのものだった。
「…武田の組長を説得するのは、至難の技ですぞ?」
「覚悟の上だ。…ゆきは、武田のひとり娘だ。俺があいつを嫁に娶れば、武田の血が…絶える。簡単には許しちゃくれねぇだろうが…俺はこの伊達組も、ゆきも手放す気はねぇ」
しばし鋭い視線が交差したあと、小十郎は仕方がないというように苦笑して。
「…わかりました。薬箱、用意して待っています」
「HA!上等だ。2、3発で済むよう祈っててくれ」
俺が殴られて終いなら、易いもんだ。
そう笑って俺は、気を引き締め直した。