第6章 姫のためなら【丸井ブン太 仁王雅治】
お化け屋敷の出店について、仁王はブン太と女の子を先に行かせた。
2人が入ってすぐ、仁王は私の手を引き、来た道を走って戻る。
「え!?仁王!?」
「ブンちゃんを取り返すんじゃ。
わしらの姫のためにの」
「え!?え!?なに!?」
前を走っていた仁王が突然止まり、背中に衝突する。
「ぶふ。
ちょっと急に止ま…」
「おっちゃん!
さっき新しいの届いてたじゃろ?
古いほうくれ!
金ならちゃんと払う!」
仁王が頭を下げてるのは綿菓子を売ってるおじさん。
え?
新しい?古い?
「ほれ、お前さんも頭下げんしゃい」
「え、お、お願いします!」
状況は全然飲み込めないがとりあえず頭を下げる。
「えー…いやぁ、そー言われてもなぁ」
「友達の最後の願いなんじゃ…」
「え?」
「最後に、ずっと欲しかった綿菓子機が欲しいって。
マイ綿菓子機が欲しいって…
でもわしら中学生じゃ新品なんて買えんくて…グスッ」
こいつ演技してやがるぅぅ!!
誰が最後なんだよ!
笑って顔あげられねえだろ!
「そうか…
お嬢ちゃんも、にいちゃんも泣くんじゃねーよ」
ごめんね、おじさん、笑って肩が震えてるだけなの。
「そこまで言うならいいぜ…
しかし、金は払ってもらう。
2人で2000円だ。
それでいい」
「おっちゃん!
でも、それじゃ、!」
「いいんだよぉ。
おめーさんらの友情に感動した…」
おっちゃんそれでいいのかよ
「ありがとうおっちゃん…!
これで、ブン太の喜ぶ顔見れる…
なぁ夢子?」
「う、うん」
「箱はこれ使いな」
ダンボールまでくれて、ほんと優しいおじちゃんだ。
罪悪感でいっぱいだわ