第6章 姫のためなら【丸井ブン太 仁王雅治】
次の日の朝、待ち合わせ場所にブン太は来なかった。
「待って!もうお泊まり!?早くない!?」
「そうと決まったわけではないじゃろ」
「だって!じゃあなんで朝来ないのよ!」
「お前さんはそーやって…あ」
仁王とぐちぐち赤髪のことを話しながら登校し、2人同時に教室手前の廊下で止まった。
2人が教室の前で話していた。
まだ登校している人の数は少なく、静かな空間に2人の笑い声が響く。
ああ、ブン太は私たちから離れていくんだなー
「あ、夢子!仁王!」
こちらに気づいたブン太が走ってくる。
「わりーな!携帯充電すんの忘れてて連絡するのも忘れた!
俺、朝あいつといくことにしたから」
照れたように会釈する昨日の可愛い女の子。
「…ほーか。」
仁王はその一言を言うと教室に入っていった。
「なんだあいつ?」
ブン太が首を傾げて聞いて来たのでムッとしながら私も教室に入った。
「仁王!夢子!置いていくなよー」
授業が移動だったので仁王と行動したらブン太が追いかけて来た。
やっぱりいつもの癖でブン太も誘いそうになったけど、仁王が行くぞって手を引いたから。
「んだよ…何そんなに怒ってんだよ」
「別に怒っとらんよ」
仁王とブン太と仲良くなってからこんなこと初めてだ。とってもピリピリしてる。
「ね、ねぇ!2人とも!
秋祭り!行かない?」
「秋祭り?」
「あの、ほら!あそこの神社で今度あるの!
行こうよ!3人で!」
「そーじゃのぉ」
「ふーん。
…いこーぜ」
ニカッと笑ってくれたブン太は私の知ってるブン太だった