第6章 姫のためなら【丸井ブン太 仁王雅治】
教室の前にジャッカルがいたので、軽く脇腹を殴ってから教室に入る。
「ってぇな、なんだよ」
「そっちこそ何してんの?私のストーカー?」
「…はぁ?
ブン太は?」
「告白タイム?」
「あぁ、そう」
そう言って私の前の席に腰かけたジャッカルはブン太を待つらしい。
「ジャッカルは何の用じゃ?」
「ブン太のやつ、歴史の教科書返してくれてねーんだ。
ところで、どんな子だったんだよ」
どんな子、とは、告白してきた子のことらしい。
「あー…可愛かったよね」
「まぁ顔はの」
「ふーん、いいねぇ」
「ジャッカルだってこの間告白されてたじゃん」
「は?いつの話だよ」
「え、ほら、この間、下駄箱に手紙入ってたーって言ってなかった?」
「あぁ…あれな…」
ああ、これはブン太宛とか、他の男テニ宛だったと察し、そっとジャッカルの肩に手を置く。
「大丈夫。ジャッカルにも春は来るよ」
「そういうお前さんはどーなんじゃ?
この間F組のやつに告白されとったじゃろ」
「げ。なんで知ってんのよ」
「プリ」
柳なみにこいつも情報を持っている。
「いーい?
私はみんなのアイドルだから。誰のものにもならないの。」
「ばかじゃのぉー」
と大喜びしている仁王とは真逆にジャッカルは呆れて声も出てない。
こんなもんだ、私の日常は。
でもこの日常がいつまでも続けばいいと思ってる。楽しいし、充実してる。