第4章 熱と憂鬱【亜久津 仁】
いつもそうだ。
私はタカちゃんや、仁に必死について行っても2人は私を置いていく。
タカちゃんが気づいて振り返ってくれる時にはもう私は転んでて、もういいよって手を振って笑うしかないんだ。
今だってそう、2人はテニスという共通点で関わりを持っているが、私はすっかり置いていかれた。というか、もはや2人の背中は見えなくなってしまった。
私とタカちゃんと仁は空手が繋げてくれてた。
その空手を2人はもうやめた。
空手がテニスになった。他人から見ればただそれだけのことかもしれない。でも道場の娘の私からしてみれば無関係になったも一緒。
悔しくて下唇をぐっと噛み締め大股で家まで向かう。
「…あんな白菜腐ってしまえ!!」
「夢子…ちゃん?」
「!!
タカちゃん!!」
呪いの呪文を唱えた途端、仏が出て来るなんて酷いじゃないか神様。