第3章 思い遣り【忍足 侑士】
夕食を食べ終え、2人で片付けて、お風呂に入り、侑士が私の髪を乾かしてくれる。
「ええな、同じ匂い」
乾かしながら私の髪を嗅ぐからくすぐったくて身をよじると、後ろからぎゅっと抱きしめられる。
「…なぁ、ええ?」
「…ん」
頷くとすぐに降ってくる唇。
そのままソファで、そしてベッドに移ってからも侑士の熱は冷めなかった。
別に嫌ではない。気持ちよくないわけでもない。体は反応するのに、頭は冷静で、あぁ、これで侑士に抱かれるのは最後かもしれない。そんなことを考えた。
「夢子?よくない?」
「…ううん」
時折、心配そうに見つめる侑士にキスで返した。
行為を終え、熟睡している侑士の腕から抜け出し、下着をつけ、上だけ羽織ってベランダへ出る。
「わ、寒い…」
もうすっかり冬のようだ。
侑士との5年間の様々のことを思い出す。
「大切にしてもらったなぁ…」
気温はとても低くて、寒いのに、目も顔も胸も熱くなる。
「…やだなぁ…別れたく、ないなぁ…」
足音がして振り返る。
「…夢子?何してん…
寒いやろ」
寝ぼけた侑士が後ろから抱きしめてくれる。
「…うん、もう戻る。戻ろ」