第3章 思い遣り【忍足 侑士】
「うわ、うまそー。
ありがとうな。こんな豪華なん作ってくれて」
夕食をテーブルに並べ終わる頃に部屋着に着替えて戻って来た彼はそんな言葉を並べた。
「シャンパンと赤ワインどっちがいい?」
「そんなんも買ってあんの?
どっちでもええよ。夢子の好きな方で」
「はーい。
じゃあほら、乾杯しよ」
赤ワインをグラスに注ぎ、侑士に渡す。
「侑士、お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
チンとグラスの音がして、真っ赤なワインを流し込む
顎を上げた時に見えたテーブルの横に置いてある小さな棚。
「侑士」
「ん?
ん、この貝めっちゃうまい」
「ありがとう。
あの、さ、プレゼント、まだ買ってなくて、ごめんね」
「おん。ええよ、別に。
こんな豪華なもん作ってくれたし。
それに夢子が居ればそれでええ。」
「…ありがとう」
毎日のように侑士の口から吐かれるアマイアマイ言葉たち。
彼はもうその言葉だけで満足してる気がする。