第3章 思い遣り【忍足 侑士】
今日は彼の23歳の誕生日だ。
彼の誕生日を祝うのは5回目。もうそろそろ付き合ってから5年経つ。
付き合ってなかった高校三年生の時の彼の誕生日、私は一友人として、確かパックのコーヒー牛乳を奢ってあげたと思う。
それからしばらくして彼から告白され付き合って、大学四年間は別々の大学でも特にトラブルもなく、大学院に進んだ彼と就職した私は同棲を始めた。
多少の生活リズムの違いはあったものの、お互い干渉し合うタイプではないので、うまく行ってると思っていた。
しかし最近、思う。
うまく行っている、のではなく、お互い冷めて来ている、のではないか。
安心や居心地のよさから抜けられないからここにとどまっているのではないか。
そんな風に思い始めた。
付き合い始めた頃は、他の女の子からのプレゼントや告白は全て断ってくれていた。そして、いちいち私に報告してくれていた。ご丁寧に名前まで。
「不安にさせてごめんな。せやけど、ほんまに夢子のことしか見てへん。信じて。」
そんな言葉とともに。
「今日女友達に言われたんやけど…
告白されたとかそんなん知らん方がええことやろって。彼女もそんな情報いらんと思うてるでって言われて…
なんや、逆に嫌な思いさせてたみたいやな。」
と、大学時代謝られてからは、彼は私に報告しなくなった。
他の女に私の気持ちなんかわかるわけないじゃん、何素直に聞いてんのって心の中で呟いた。
彼のそんな気配りは一体どこへ行ったんだろう。
プレゼントした時計を外したままなんて、ましてや他の女からもらったものをつけるなんて…
もう決定的なのかな。