第2章 オモイオモワレフリフラレ【柳 蓮二】
「…またか。」
私の話を聞いた柳はそう言い、ため息とビールを飲み込んだ。
「…自分でもそう思ってる。
なんだろうね。」
奴と関係を持ってから気づいたことが2つある。
1つは奴が配偶者とうまくいってないときは電話に出ないこと。逆にうまくいってるときは電話に出ること。
上手くいっている時は余裕があるのだろう。逆に上手くいってないときは私の電話1つで崩壊してしまうかもしれない。結局奴は安定第一だ。
もう1つは、私が柳を頼りにし過ぎているということ。奴とのことで、もちろん嬉しいことがあれば悲しく辛いこともある。それら全てにおいて、いつも柳の顔が浮かぶ。そして、柳に連絡してしまう。
奴と私の関係はつまり、今話題の不倫という奴だ。
入社してすぐ、直属の上司の奴に惹かれたのは、正直しょうがないと思ってる。
事実、私がミスするたびにカバーしてくれたのは奴だし、上司からのお叱りも奴は私を庇ってくれた。いつも笑顔で私を慰めてくれた。
優しかった。
出会った頃にはもう薬指に光るものをつけていて、子どももいて、わかりきっていた結末に自ら向かったバカは私だ。
だから奴に文句は言わない。
ただ、奴と連絡があまり取れなくなった時、たまたま会った柳に泣きついたのがきっかけで、それからはずっと、奴と何かあると柳に頼る癖がついてしまった。
柳は優しい。
でも、はっきり物事を言ってくれる。
だから一緒にいて落ち着くし、頼り甲斐があるのだ。