第5章 好きなんだ
瑞希side
「え、何かエピソードとかあるんですか?」
MCの女性がニヤニヤと何か期待しながら尋ねてきた。
「俺、恋愛経験とか無くて本当の好きとか分からないんです。けど、最近何となくわかってきた気がします。『好き』ってこんな感じなのかとか『どうしたら伝わるのか』とか……恋愛経験がない癖によくラブソングとかバラード歌えたなって感じですけど。けど、今実感してるからこそこれから先、歌う曲とかにもより感情移入しやすいと思います。」
恋愛経験が無かったって……
それって付き合ったことも無いってこと?
じゃあ、僕にした事とかも初めて……?
「ゆ、裕斗さん、それって今好きな人がいるってことですか?!」
ちょ、まって!
僕、完全に話に引き込まれてたけど!
流石に本当に答えすぎでは!?
仮にもアイドルなんだし、恋愛禁止って事務所ではないけどこの話はやばいんじゃ!?
「……たぶん?けど、俺最低なことしちゃったみたいで、今かなり避けられてますよ。だから諦めてるし、そもそもアイドルなんで恋人を作る気はありません。ただ、思いさえ伝わってくれればいいです。せめて仲直りだけでもできたらいいですけど。」
ん?
これって僕の事じゃ……ないよね?
いやいや、流石に自意識過剰すぎるよ!!
「そうなんですね……仲直りできるといいですね(笑)」
あれ……周りは普通にしてる……
ファンだったら騒ぐよね?
まぁ、でも付き合ってるって訳じゃないし……そこまでにはならないのかも……?
「では!最後の質問にしましょう!!」
「瑞希引きなよ!」
圭くんが勧めてくる。
「えっと……じゃあ……」
箱の中に手を入れる。
うわっ……結構入ってるなぁ……
んー……変なの当りませんように!!
僕は勢いよく取り出し紙をゆっくりと開く……
「『自分の直そうと思うところはなんですか?』……」
普通の質問きたぁぁぁ!