第11章 翔太
翔太の腕には何度もリストカットをした後があった。
結局、薬もやめていなかったようだ。
だからその分どんどん痩せていった。
こうなったのも全て俺のせいだ。
翔太と喧嘩しなければ、気づいてやれれば。
親友なのに何もできなかった。
翔太の死については公表しなかった。
翔太の家族から知られたく無いと言われた。
行方不明になったため、当然マスコミは黙っていなかった。
事務所には何週間も記者やマスコミが待ち伏せしていた。
「気づいてやれなかった。裕斗、ごめんな。」
真広が俺に頭を下げる。
それに続いて、圭と隼也も謝り出した。
「お前らは何も悪くねぇだろ。俺が悪いんだ。」
「俺、リーダーなのにメンバーの事全然見てなかった。」
「仕方ない。仕事もバラバラだったんだ。」
たった1人の大事な親友を失った。
それがこんなに苦しいものだって知らなかった。
二度とこんな苦しみは味わいたくない。
全員がその思いを抱き、4人で支え合ってここまでやってきた。
何か足りない物を感じつつもそれを無視してきた。
4人での活動も慣れてきたとき、
『僕、アイドルやります!』
そう言って俺らの前に瑞希が現れた。
翔太と瑞希を重ねてしまっていた。