第11章 翔太
翔太っ…翔太っ…!
頭の中で何度も名前を連呼して大丈夫、大丈夫だと言い聞かせていた。
家の前に着くとインターホンを何度も鳴らし、ドアを叩いた。
「すみません!裕斗です!開けてください!!おばさん!!」
開かない。
急がないと翔太が……
いや、悪い事は考えないようにしねぇと。
落ち着け……
裏庭の方に回り、上を見上げる。
確かこの丁度上が部屋だった。
小さい頃に翔太が鍵を忘れ、一度だけここから部屋に登ったことがある。
梯子はいつも横に立て掛けてある。
おばさん…借ります…
梯子をかけ、部屋まで急ぐ。
翔太はよく鍵をかけ忘れるから80%の確率で開いてる。
窓を勢いよく開け、部屋に入る。
「翔太っ!!…っ!?」
目の前に飛び込んできたのは縄で首を吊っている翔太だった。
俺はその場に用意していたプレゼントを落とし、翔太に駆け寄った。
まだ生きているかもしれない、そう思い翔太を降ろそうとしがみついた。
助けを呼ぼうととりあえず警察と救急車に電話をした。
その後はただひたすら翔太の名前を呼び続けた。
警察、救急車が到着し、その場にいた俺は警察に保護された。
救命士が翔太の脈を測り、呼吸を確かめた後、首を横に振ったのがわかった。
どういうことだよ…
「おいっ…まだ翔太は死んでない!ちゃんと診ろよ!医者だろ!!」
「君!大人しくしなさい!!」
「離せっ!翔太っ!おいっ!起きろよ!!」
必死に叫んだが、翔太が目を開ける事は無かった。
気がつくと、俺は葬式場に来ていて手を合わせていた。
棺桶の上に花沢山の中にある顔写真は満面の笑みを浮かべた翔太が。
あぁ…そっか。
死んだのか。
あいつはもうどこにも居ないんだ。
俺は手に翔太にあの日あげるはずだったプレゼントを持っていた。
翔太の誕生日が翔太の命日になってしまった。