第11章 翔太
その日から翔太と会うことはなかった。
仕事に学校、お互いバタバタして顔を見合す事さえなかった。
連絡も取れなくなった。
「裕くん。翔ちゃんの電話繋がらないんだけど、そっちはどうかな? 」
「翔太?……かけてみる。」
そう言って携帯を取り出し、電話をかけてみる。
今日は翔太の誕生日で、プレゼントも用意していた。
「繋がらないな。……今から翔太の家に行く予定だったから用があるなら伝えておく。」
「そっか……大丈夫。別に急ぎじゃないから。ありがとー。」
そう言って圭が手を振りながら楽屋を出て行った。
今日はプレゼントを渡すついでに、今までの事を謝ろうと決めていた。
このギスギスしたままはやっぱり気持ちが悪い。
たまたま撮影現場から翔太の家が歩いて行ける距離だったため、歩いて帰った。
撮影現場から5分ほど歩いていると、ポケットに入れていた携帯が鳴った。
翔太からだ。
「もしもし。翔太?今そっちに……」
『裕斗…俺もう無理かも。』
「翔…太?」
様子がおかしい。
声がか細く、うまく出ていない。
『最期に謝ろうと思って裕斗に電話かけたんだ。』
「待て…何言って…」
『ごめんね。俺、お前が親友で良かったよ。楽しかった。ありがとう。他のみんなにも伝えといて。…ありがとうって。ごめんねって。』
「そんなの自分で!」
『バイバイ。』
「っ!翔太!!まっ!」
電話の向こうで物凄い音がした。
恐らく携帯を落とした音だ。
翔太の声は何も聞こえない。
俺はその音を聴いて、翔太の家まで全力疾走した。